チャールズ・ミンガスという人物について、7回に渡り特集してきたわけですが、これはミンガスという偉大な音楽家の
ほんの一部に過ぎません。
ミンガスという存在を知るには、実際にミンガスの音楽に触れてみるのが、一番の近道です。
明日の
ミンガスナイトが、皆さんにとってそのひとつのきっかけとなれば幸いです。
【ミンガスとの出会い】

僕のミンガスとの出会いは大学の一回生のときでした。
直立猿人、ベースの師匠に貸して頂いた何枚かのCDの中にそのアルバムがありました。
不気味なジャケットに、不思議と心惹かれるものがありました。
その晩、恐る恐るそのCDを聴いてみて、衝撃を受けました。
「なんておどろおどろしい音楽なんだ!!」当時はまだジャズを始めたばかりでしたがなんとなく「ジャズは最初にテーマを演奏してソロを回してまたテーマをやって一曲終わる音楽なんだな」と漠然と思っていた僕でしたが、そのジャズ観がことごとく打ち破られました。
メロディはビバップのそれとは違うロングトーン、ベースはランニングではなくひたすら根音を弾いていて緊張感を出している。
急にフォルテシモになったと思ったらまた抑制された音になる。
テーマの後半、メンバー全員が
集団即興演奏を始める。
'56年にこんな
フリージャズのような演奏をしていたとは!
JRモンテローズのソロのバックでサックスで
猿の鳴き声のような雄たけびを上げる
ジャッキー・マクリーン。
ホレス・パーランのピアノに執拗に絡み、挑発し鼓舞するミンガスのベース。
猛烈に熱い!演奏から発散される
エネルギーが凄まじいんです。
直立猿人はまるで組曲のようで、
大作映画を見ているかのような感覚でした。イメージを刺激するんです。
ミンガスによると実際に「
進化」「
優越感」「
衰退」「
滅亡」の
4部構成になっているそうだ。
二曲目の「
A Foggy Day」もまた凄い。
邦題が「
霧深き日」なんですが、これがまた不気味な感じがしてたまりません。
深い霧の中で猿人が生まれ、死んでいくような。
イントロではサックスがクラクションのような音を出すなど、街の雑踏が再現されいる。
これもまたおどろおどろしい雰囲気です。
これは大作映画というよりは、昔の松田優作の映画のような感じがしました。
暗い夜の港でマフィアが何かの受け渡しをしているような、そんな感じです。
聴いていると自然に映像が浮かんでくるんです。
こんな経験は初めてでした。
そこで流れている音楽は、既成概念にとらわれず、新しいことを常に模索し、
自由に表現しようとしている人たちの音楽でした。
正直、最初の感想は「
なんじゃこりゃ!?」でした。
しかし耳からその音楽が離れず、眠れず、結局またそのCDを繰り返し聴きました。
気づいたときには朝になっていました。
そして気づいたときには、ミンガスのとりこになっていました。
posted by 権上康志 at 20:52
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